12/24版 


時雨に濡れる石畳に差す陽の光  マウスを載せれば写真が変わります
 33日間も平年気温を上回る温かい日が続いていましたが、昨日からは一転して寒い日となりました。
 今朝の最低気温は2・4度で、この冬一番の冷え込み。三千院のある大原では、早朝から雨混じりの小雪が舞い、屋根や垣根などがうっすらと雪化粧をしたそうです。
 1か月予報も、明日から1週間は気温が「平年並か低くなる」と修正されました。いよいよ本格的な冬が来そうです。
 今頃の天気は、晴れているかと思ったら急に時雨れてきたり、またいきなり青空が出てきたりで、バイクに乗るのも、写真を撮り出るのも、躊躇してしまうことがあります。
 そんな処しにくいお天気も、「雨の降る日は天気が悪い。時雨も冬が来た証拠かな」などと諦めてしまえば、結構楽しめるかも知れません。

   繊細な枝が美しいもみじ   マウスを載せれば写真が変わります
 「師走」は、家々での読経のために師(僧)が走り回るというのが語源だともいわれていますが、諸説紛々。
 真如堂の各塔頭では、檀家の家を回るのは「月並み」のことで、年末だからといって檀家の家を特別に回ることはありません。
 でも字のごとく、年末の29・30日頃に、檀家を回ってお経をあげる忙しいお寺もあるようです。お寺は、宗派や地域、規模、ご本尊、住職など、様々な要因によって、忙しい時期や行事なども大きく違いますので、他のお寺のことは正直いってよくわかりません。
 真如堂の今年中に残された行事は、大晦日の法要と除夜の鐘ですが、26日には本堂のすす払いを若手の僧侶たちが行います。「40、50は鼻たれ小僧」という世界ですから、もちろん、ボクはバリバリの若手です。
 その他、正月に墓参をされる方を迎える準備や、各坊の大掃除、祭壇の金属製の道具を磨くなどの地道な迎春準備が、各塔頭では進められているでしょう。たぶん。


          受  付  に  僧  ひ  と  り  ゐ  て  賀  状  書  く      茨木和生


    露仏に参拝する六阿弥陀巡拝の人   マウスを載せれば写真が変わります
 今日は今年最後の「六阿弥陀巡拝日」。市内6ヵ寺の阿弥陀様を巡礼してまわる行事の「功徳日」です。
 大半は初老を越えたと思われる女性たちが本堂に参詣し、その証に通いにスタンプを押し、第2番の永観堂に向かわれます。
 そんな人たちに混じって、ごく稀に本堂前の寺の由緒を書いた駒札に見入っている人がおられます。静かな時がお好きな観光の方でしょう。
 また、巡礼の方々が供えたお賽銭を集めて回っている人もいます。
 ボクが「なにしているん? それ盗ったらダメやんかぁ」と言うと、彼はにわかに怒り出し、「これはワシのやぁ。ぜ〜んぶ、ワシのやぁ」と叫んで消えました。何だかよくわかりませんでした。
 午前中はそんなこんなで少し賑やかでしたが、午後からは巡拝の人影もほとんどなくなり、落ち葉回収の仕上げを急ぐ職員のブロアの音が、時雨の境内にことさら大きく響いていました。
 
本堂裏にたった1本残る紅葉   マウスを載せれば写真が変わります
 ボクの“紅葉終息宣言”はすでに出しましたが、本堂裏のもみじの木1本だけがいまだに真っ赤な葉を付けています。
 他の木はすっかり葉を落としていますので、遠くからでもその紅い色が目立ち、「わぁー、紅葉が見られるとは思わなかったわぁ」と喜んで駆け寄っていく人もおられます。
 先日、永観堂ゆかりの僧とお話ししましたが、永観堂も紅葉がダラダラ残っているとおっしゃっていました。
 師曰く、「今頃来て、『わぁー、紅葉が綺麗!』って言う人がいるんや。なーんも綺麗なことあらへんのになぁ。ちょーっと残っているだけや。ほんまにええ時に来たら、腰抜かすでぇ。」
 同感です。でも、「今が最高!」と思って見る人は、ある意味では幸せかも知れません。そんなことを考えていたら、経典に載っているこんな例え話を、なんとなく思い起こしました。

     昔、インドの王が“象”というものを教えてあげようと、国中の盲人たちを集めて、一頭の大きな象に触れさせてみました。盲人たちは、初めて象の耳や牙、鼻、胴体、脚、尾などにそれぞれ触りました。
     後で王が、その者たちに「象とはどのようなものであったか?」と聞くと、ある者は「象とは薄い扇のようなものです」と言い、またある者は「縄のようなものです」「いや、太い柱のようなものです」「臼のようなものでした」「丸く長いものだ」「ツルツルしたものだ」などと口々に主張し、言い争いになりました。家臣たちもそれを見て嘲笑いました。
     お釈迦さまは、「人々はみな、自分の思うことが最も正しいと思い、他人の意見には耳を傾けようとはしない。仏の教えも『私はこう聞いた』『いや、私はこう聞いた』などと、その全体を見渡すことなく誤った解釈をしている」と諭しました。

      ほんのわずかに残る紅葉/ 本堂裏の1本分の散りもみじ    マウスを載せれば写真が変わります
 三千院近くのお寺の僧には、「今年も大原は悪かったですわぁ。真如堂はきれいですよ。真如堂のもみじの実生を1本下さいよ」と頼まれました。
 他の方にも同じように頼まれましたが、それっていいですね。
 来年、こぼれた種から小さな林のようにいっぱいの芽が出たら、それを育成して少し大きく育て、希望される方に差し上げようかと思います。真如堂のもみじが全国に嫁ぐなんて、ステキじゃありませんか! 芽の段階で枯れてしまうことも多いので、何とか技を磨いて大きく育てなければ。
 紅葉の“反省会”も終わり、あとは残り香のような紅葉を心ゆくまで楽しませて貰いましょう。


       二  度  ま  で  は  箒  と  り  た  る  落  葉  か  な      高井几董


架け替えられた極楽橋 / 横から見ると弓の弦の形?   マウスを載せれば写真が変わります
 7月から架け替え工事が行われていた黒谷の石橋の工事が終わり、昨日、渡り初めが行われました。
 この石橋は「極楽橋」といい、「蓮池(別名 兜之池)」に架かっています。京の社寺では最古の石橋だそうで、今回、約360年ぶりに架け替えられました。
 鎌倉初期、熊谷直実なおざねが、この地に庵を結んでいた法然上人を訪ね、出家を決意して兜を置き、弓の弦を切って弓を池に架けたのがこの橋の形の由来だとか。なるほど、弧を描いた綺麗な形ですが、弓を池に架けたって、えらい大きな弓だこと…。
 直実といえば、源頼朝の家来で、一ノ谷の戦で活躍。 笛の名手といわれた平敦盛あつもりと戦って、自分の息子と同じ年格好の美しい少年敦盛を不憫に思い、殺すのをためらうものの、味方の軍勢が近付いて来たため、泣く泣くその首を討ったという逸話の主。黒谷には直実・敦盛の墓があり、2人の像も熊谷堂に安置されています。
 「寛永5年(1628)には、春日局が徳川2代将軍秀忠の正室お江与の御台墓を建立し参詣するために、蓮池に木造の「極楽橋」を寄進。その後、寛永10年に、豊永堅斎が秀忠公菩提追福のために山上に三重塔を建立し、同18年(1641)に極楽橋を石橋に作り替えた。江戸時代の『都花月名所』には蓮の名所と謳われている。」(橋脇の駒札より)
 以前の橋は、老朽化で石にひび割れが生じたりして、一部が鉄板で補強されていました。以前はなかった擬宝珠や欄干も加わり、「極楽浄土の橋を再現した」のだそうです。
 ボクは、中学のクラブの時、この橋の中央側の高いほうに足を、低いほうに頭をやり、腹筋をさせられた覚えがあります。

直実が出家の時に着ていた鎧をかけたという「鎧掛けの松」 黒谷  
 数年前にはカルガモを見かけたこともありましたが、ほとんど水もなく、草ボウボウだったため、カルガモも愛想尽かして住みつかなかったようです。
 ボクの行く前から大型カメラをかまえて、通行人がいなくなるのを待っている人がいました。聞くと、この橋の工事を請け負った会社の社長さん。趣味が高じて、完成写真を自分で撮るようになられたそうです。
 ボクも自己紹介をして、「あんたも好きねぇ」とお互い思いつつ、ボクは人が橋を渡ってくれるのを待ちました。
 ところが、2人でカメラをかまえていると渡りにくいのか、わざわざ迂回する人が大半。そのくせ、墓参の人影も絶えず、結局二人して、30分以上、カメラの話をしながら粘っていました。
 帰ってから、「あっ、橋を渡ってくるのを忘れたぁ!」と気がつきました。まったくドジな話です。
 今は水が張ってあるだけの池ですが、来春にはその名の通り蓮を植え、往年のように蓮の名所として復活させたいとのことですから、楽しみです。

 今年も残すところ1週間。「あれもしていない…」「あっ、これをしておかなくては…」と指折り数えると、だんだん頭が痛くなってきます。
 「最低限のことをすればいいかなぁ…」と割り切ってしまえば少し気が楽になるのですが、まだ最低ラインにも達していません。まずは、年賀状をクリアしないといけません。
「網の間からお食べ」と言わんばかりの鳥ガード / しきみの花   マウスを載せれば写真が変わります
 年賀状も、メールのやりとりをしている人とでは二重になるという考え方もあれば、年に1度くらいはメールではなく葉書でご挨拶したいという気持も湧いてきます。メールと葉書の差は何でしょう?
 今日はクリスマスイブ・・・仏教にもこんな行事が欲しいなぁ〜。
 赤と白の服を着た太めのサンタは、1930〜40年代に米コカ・コーラ社がCMに起用して流行したのだそうです。
 モデルとなった心優しい司教「聖ニコラウス」も、サンタがバーゲンの売り出しに担ぎ出されたり、風俗店の客引きが扮装したりで、いい迷惑でしょう。
 26日は全国高校駅伝競走大会です。冬の京都は、ロードレースの季節でもあります。駅伝やマラソンのコースや時間を避けながら移動するように道を選ばないと、巻き込まれてしまったら大変です。
 冬に多い、カキや2枚貝などから感染するノロウイルスによる食中毒が多発しています。そのようなものを食べる機会が増える年末・年始、あやしい時は加熱してお食べ下さい。
 あと、1週間、頑張るぞぉ!


       悲  し  み  の  灯  も  ま  じ  る  街  ク  リ  ス  マ  ス      堀口星眠