12/3版 


朝日の中の紅い落ち葉  マウスを載せれば写真が変わります
 紅葉も、そろそろ終焉を迎えようとしています。
 今まで濁り気味だった紅い色がようやく澄んできたようにも見えましたが、やはり本調子までは辿り着けなかったようです。
 まだまだ真っ赤な葉もあれば、赤くならずに立ち枯れたように茶色くなっている葉、チリチリと縮れている葉、いつもは赤くなるのに今年は黄色どまりだった葉、一向に色が変わらず緑のままの葉などが渾然一体となって、境内を覆っていますが、それも来週半ば頃終わりでしょう。
 最後の見頃となるであろう4・5日の土日には無常の雨が降る予報。その後もお天気はなかなか回復しそうにありません。
 掃いても掃いてもキリがない大量の落ち葉が濡れてしまっては掃除するのも一苦労と、今朝、職員さんが境内の落ち葉を急いで掻き集めていました。


        遠  い  木  が  見  え  て  く  る  夕  十  二  月      能村登四郎


   早朝の本堂前   マウスを載せれば写真が変わります
 訪れる人も減り、本堂・庭園の拝観者数は、ピーク時の1/6程度。団体の姿も、ほとんど見かけなくなりました。
 毎日朝一番に本堂前で記念写真を撮り、境内をグルッと回るだけで帰っていった団体も、来られなくなりました。紅葉の一番綺麗な場所をゆっくり見ることもなく、「真如堂に行った。綺麗だったよ」というだけの、ボクからすると気の毒な団体でした。
 今日の早朝、どこかの小学校の一群が、正面から本堂裏に向けて一気に境内を突き抜けていきました。せっかくの最後の紅葉を見たり、カサコソ落ち葉の中を走らせてあげればいいのに…。まして、焼き芋大会でもすれば、何にもまして子供は喜ぶのになぁ…。どこへ向けて急いでいたのでしょう。
 そんな急ぎ足で訪れる人を見ていて、今度自分がどこかへ行った時は、あまりあちこち回るよりも、じっくりとその地のいいところを時間を掛けて見てみたいと思いました。

    本堂裏の紅葉    マウスを載せれば写真が変わります
 ボクの、今のオススメ境内紅葉スポットは、本堂裏と、正面階段の右側の坂(吉祥院前)です。
 真如堂の紅葉に詳しい人なら、本堂の裏が12月の声を聞くと綺麗になることをよくご存じです。
 でも、残念ながら、今年の本堂裏は色がくすんでいて、真っ赤ではなく朱色がかり、あまり綺麗ではありません。茶色く枯れている葉も結構たくさんあります。
 待っていても今以上は綺麗にはならないでしょうし、例年は散り紅葉が赤い絨毯を敷き詰めたようになりますが、落ち葉自体があまり綺麗ではありませんので、それも期待できません。
 白川通「真如堂道」から登ってこられて最初に目にはいるのは、この本堂裏の180度の紅葉。多くの人は、「わぁー、きれい!」と感嘆の声をあげておられます。
 「本当はもっともっと綺麗なのですよ」と、ボクは心の中で教えたがっています。
吉祥院の前あたりの紅葉 マウスを載せれば写真が変わります
 吉祥院前の竹囲いと生け垣に囲まれた一角の紅葉は、今年は黄葉が主体です。
 境内のもみじは、葉が小さいイロハモミジやヤマモミジが主ですが、この辺りは葉が少し大きく背が高くなる種類。オオモミジの系統でしょうか。
 ようやくここ10日間ほどで綺麗に色付いてきましたが、今年は赤くならずに黄色いままで散っていく木が多いようです。
 本堂の裏は、東山から朝日が昇ってきた朝のうちが綺麗でしょう。夕方は本堂の影になってしまいます。吉祥院の前は、やはり斜めに朝日がさしてきた頃や、夕方が綺麗でしょう。
 他の場所も、もうしばらくは紅葉を見ることができます。晴れた日の朝か夕方がベストですが、紅葉の終焉までにもう一度そんな日がやってくるでしょうか。最後に有終の美を飾らせてやりたい気がします。

      本堂から見た 裏/表 の境内    マウスを載せれば写真が変わります
 先日、京都市交通局の案内所にお勤めの檀家の方と話をしていたら、この紅葉シーズンはやはり大忙しで、いろいろな苦情も寄せられたそうです。
 「東山からバスに乗ったら、駅まで2時間もかかって、新幹線に乗り遅れた。どうしてくれるんだ!」と、すごい剣幕で叱られることもあったそうです。
 この時期の京都は、場所によってバスが動かないのは当たり前ですが、中にはそれをご存じない方もおられます。「混雑して時間がかかることがあります」という趣旨の注意書きがバス停に掲示してあったりもしますが、まさかこんなに混むとは思っておられなかったのでしょう。秋の京都の交通事情を甘く見てはいけません。
 忘れ物をした、どの経路のバスに乗ったらいいのかという問い合わせも、ひっきりなしだとか。
 市バスには「ポケロケ」という、京都市営バスの接近情報を携帯やパソコンで知ることができるサービスがあります
朝日に“ライトアップ”されたもみじ葉 マウスを載せれば写真が変わります
が、今度、電話で話すだけで、自分が行きたい場所に向かうバスの系統番号とバスの位置を教えてくれるシステムの試験運用が始まりました。
 受付電話番号の075(326)3116に電話をすると、「こちらは音声ポケロケ実験サービスです。ご利用になるバス停または系統番号をおっしゃってください」と機械がしゃべるそうです。
 あとは、利用者「百万遍から」 システム「百万遍からでよろしいですか?」 利用者「はい」 システム「降りられる停留所をおっしゃってください」 利用者「二条駅前」 システム「二条駅前まででよろしいですか?」 利用者「はい」 システム「百万遍から二条駅前、206系統、東山通り北大路バスターミナル行きのバスは2つ前の近衛通を出発しました」などと教えてくれるそうです。
 10日ほど前、このことが地元紙に載りましたが、京都市民でさえ利用したことのある人は、ほとんどおられません。
 まして、案内所に問い合わせてこられるのは、ほとんどが携帯などが使えない方でしょうから、このような仕掛けにも“乗り遅れ”がちでしょう。
      朝の静かな境内      マウスを載せれば写真が変わります
 先月26日には、市営地下鉄東西線の醍醐−六地蔵間2.4キロが開通し、地下鉄とJR・京阪電車の連絡がよくなって、醍醐や宇治付近のアクセスが向上しました。
 このことについても、「聞いてない!」と叱られたそうです。「聞いてない」と言われてもねぇ…。
 檀家の方も、開通間もないのでこの区間はまだ乗ったことがなく、乗り継ぎ方法で少し曖昧な答えをしたら、「知らないのか!」とまた怒られたそうです。
 知らない土地で道がよくわからないのも不安でしょうし、どこへ行っても混雑してイライラするのはわかりますが、そんなに怒らなくても……。
 自分の行きたいところまでの道順ぐらい、ちゃんと自分で調べたらどうなのでしょう。今年流行の「自己責任」の範疇ですよ。
 紅葉のシーズンも間もなく終わりです。東山の寺院のライトアップも早いところはすでに終わり、清水を除いて5日で幕を引きます。ようやく、京都にも静かな時がやってきます。都大路の混雑も一段落です。

      紅葉の中に咲く水仙/枯れ葉に埋もれる吉祥蘭    マウスを載せれば写真が変わります
 師走。今年も夏を過ぎたらあっという間でした。
 南座では、芝居小屋と1年の契約を交わした役者が顔を見せる「吉例顔見世興行」が、30日から始まりました。京都の師走の風物詩です。
 あちらこちらから、正月の縁起物作りや迎春準備の話題が聞こえてきて、それを聞く度に急かされているような思いもします。
 ようやく紅葉シーズンが終わるかと思ったら、息つく間もなく、「京の冬の旅 定期観光バス特別コース」が4日からスタートします。手始めの「うるわしコース」は、NHKの大河ドラマに因んで、「義経と平家ゆかりの史跡巡り」。これもマンネリ化は否めません。
 師走と聞くと妙に神妙になったりもしますが、もう2度と帰ってこない月日であることは、いつとて同じ。いつの頃からか、「正月なんて要らない」と、正月を逆恨みするようになりました。


        短  日たんじつ  の  気  息きそく  の  ま  ま  に  暮  し  け  り       阿部みどりじょ