10/29版 


日ごとに色づく「花の木」  マウスを載せれば写真が変わります
 急に、寒さを感じるようになりました。
 28日朝の市内の最低気温は5・9度。平年を4・8度も下回りました。慌てて暖房の用意をして、これからいつ急な冷え込みがやってきても大丈夫なように備えました。
 冬の京都の風物詩、北からの渡り鳥ユリカモメも鴨川に飛来し始めました。
 ユリカモメは、カムチャツカ半島から越冬のため日本に渡ってくるのだそうで、飛来日は平年並。
 白い翼を広げて優雅に舞うユリカモメを見ると、「あー、冬が来るのだなぁ」と思います。
 この冷え込みで、境内の木々の色も変わり始めました。「花の木」は枝先のほうからグッと赤さが増してきました。もみじも、木によっては濁った赤色の兆しが見えてきました。
 紅葉へ、そろそろ始動です。


       朝   寒   の      づ   れ   ば   犬   の   咽   喉   仏のどぼとけ      中村草田男


   焦ってはいけません。まだ紅葉には早すぎます    マウスを載せれば写真が変わります
 もうすぐ11月。つい先日まで「暑い、暑い」と言っていたのに、あっという間に11月になってしまいました。
 11月、京都観光は1年中でもっとも忙しいピークを迎えます。すでに数ヶ月前から、週末のホテルは満室状態。今からホテルを探すのは至難の業です。道路は混雑して、日常生活にさえ支障を来すことも珍しくありません。
 皆さんは錦秋の京都を求めておいでになるのだと思いますが、今年はどうでしょう。
 昨年の紅葉はかなり悪く、一昨年は近年稀なほど綺麗でした。でも、紅葉は総体的にだんだん綺麗ではなくなってきている、澄んだ紅葉が見られなくなってきている気がします。
 紅葉が年々遅くなってきているとも、よく言われます。
 東京などでは、紅葉が遅くなるのと、建物の床面積の増加と比例しているという調査結果もあります。紅葉の遅れと都市化には奇妙な関係があるというのです。ヒートアイランド現象でしょうか。
 それがそのまま京都にあてはまるとは思いませんが、昆虫や動植物などの変化に、温暖化は紛れもなく進んでいると実感します。
    本堂前 茶所の野菊 / 百日紅の紅葉も今が盛り    マウスを載せれば写真が変わります
 京都の気象台は中京区という市街地にあり、そこのデーターが京都盆地の平均的な数値を表すとは思えませんが、京都地方気象台にあるイロハカエデで測定した紅葉日の平年値は12月1日です。
 「紅葉日」というのは、もみじなら、緑の葉がほとんど見られなくなった最初の日をいいます。
 温かい市街地にある気象台の標準木のもみじの葉がすべて真っ赤になった頃には、気象台より気温が低い東山界隈の寺々のもみじはさらに紅葉が進んで、散り始めているものもあるでしょう。
 冷え込みの厳しい大原や高雄はさらに紅葉日は早いとして、一般的に京都の紅葉が一番美しいのは11月25日頃ではないでしょうか。
 もちろん、年によってはもっと早いこともありますし、12月に入ってからのほうが綺麗なこともあります。いつまで待っても、あざやかな赤にならない年もあります。
 今年は……実は、今の時点では、ボクは少し期待をしています。 昨年は雨が少なすぎて、もみじの葉が赤くなるより、枯れてしまいました。その点、今年は雨はたっぷり過ぎるほど降りましたので…。
      陽射しのある昼はあたたかい“境内デビュー”        マウスを載せれば写真が変わります
 美しい紅葉の条件としては、○充分な日照 ○5度前後の最低気温 ○適度な水分 があげられます。さらに、ゆるやかに気温が下がって、ゆっくりと季節が変わっていくのが最も良いのだそうで、よく「よい」と言われる急な気温変化は好ましくないのだそうです。雨が多すぎるのもダメなのですね。残暑も×。ということは……結局は、出たとこ勝負です。
 気の早い方、紅葉見物なら、まだ早すぎますよ!
 そうそう、「写真のほうがきれい…」とおっしゃっているのをよく耳にしますが、それは当たり前。雑誌などに出ている絵に描いたような紅葉は、いいところばかりを撮したものなのですから。念のため。


       黄  落  の  葉  に  ま  っ  す  ぐ  な  運  命  線       吉田美子


      真っ赤に色付いた千両の実 / 木陰の野菊     マウスを載せれば写真が変わります
 この時期になると、本堂裏の山茱萸さんしゅゆの赤い実が熟れて、輝くように赤くなるのですが、今年はなっている実の数も極端に少なく、すでに赤黒く萎れ始めていました。せっかっくの晩秋の楽しみを、一つ奪われた気がします。
 菩提樹の実もほとんどついていませんし、千両の実も少し少なめ。多雨や激暑、お天道てんと様のせいでしょうか。
 自坊の吉祥院では、毎年秋になると門内に菊の鉢が並びます。住職の40年来の趣味ですが、その菊も今年は出来がよくないのが一見しただけでわかります。住職は自分の手入れも悪かったと反省しきり。住職の手抜きもあったのかも知れませんが、これもお天道様のなせるわざが大きいでしょう。
 お天道様、今年の残された2ヶ月、もうこれ以上の災いはいりません。どうか、恵みだけをもたらせてください。


      憂  さ  晴  れ  て  そ  ゞ  ろ  に  行  け  ば  野  菊  か  な      河東碧梧桐