10/8版 


巡拝の方の姿が訪れ始めた8時過ぎの雨の境内  マウスを載せれば写真が変わります
 今日は「寒露」。冷たい露が結び始める頃。こおろぎが鳴き止んで、菊の花が咲き始め、雁が渡ってくる季節の到来。山の木々の葉は紅葉し始め、秋もいよいよ本番を迎えます。
 朝から雨が降り続いています。この雨の中、境内には普段より多い人影が見え、色とりどりの傘が動いています。
 今日は「洛陽六阿弥陀巡拝」の功徳日です。
 洛陽六阿弥陀巡拝は、木食正禅養阿上人(1687-1763)が阿弥陀仏の霊感を受けて始められたもので、3年3月怠らずにお参りすれば、無病息災・家運隆昌・諸願成就などの功徳を受けることができ、また有縁無縁の精霊の追善回向をすれば必ず極楽往生できると説かれています。
 毎月、巡拝する日「功徳日」が定められていて、今日が今月の功徳日に当たっています。
   雨の中の巡拝者    マウスを載せれば写真が変わります
 「六阿弥陀」の一番は真如堂。参拝者の方々は、雨の中を2番 永観堂、3番 清水寺と回られ、6番の誓願寺で締めくくられます。
 一番不便で静かな真如堂から巡拝し始めて、最後の誓願寺は賑やかな新京極の中。きっと、食事をしたり、買い物をしてから帰られるのでしょう。うまくできています。
 介添えの人に支えられながら傘をさしてお参りになる人、グループで談笑しながら回られる人、ひとり静かに掌を合わせる人など様々。
 雨の境内には、お線香の香りが漂っていました。

       秋   雨   の   幹   を   流   る   る   一   日   よ        山口青邨



 台風シーズンは終わりかなぁと思っていたのに、また次のがやってきて、9日には上陸する見込み。
 これで、今年上陸した(する)台風は9つ。今までの6つという記録を大きく塗り替え、2.6という平年値を押し上げます。
 過去には11月に上陸した台風もありますし、一昨年は12月に日本に接近した台風もありましたから、まだ記録更新の可能性はあります。オリンピックのメダル数の更新は嬉しいですが、上陸した台風の数の記録更新には困ったものです。
    雨に濡れる緑もしっとり綺麗 / 苔の上に散る桜の落ち葉    マウスを載せれば写真が変わります
 今年はアメリカでも大きなハリケーンが何度か上陸し、大きな被害をもたらしました。
 ご存じのように、ハリケーンには「フランシス」「アイバン」などと名前が付いています。
 このハリケーンの名前は、アメリカではアルファベット順に、男女の名前が交互に付けられ、数年先まで決まっているのだそうです。
 台風は、1号、2号と、発生順に号数が付けられていますが、実は台風にも名前があるのをご存じですか?
 日本を含む14カ国で組織される「台風委員会」というのがあり、そこが動植物や自然現象に関係する名前を、加盟国の言葉で順番につけているのだそうです。
 例えば、20号は「シャンセン」、ラオス語で象を意味します。21号は「バビンカ」、マカオ語のプリンです。そして、今度の22号は「ルンビア」、マレーシア語のサゴヤシの意味だそうです。
 でも、これでは馴染みが湧きません(湧かなくていいのですが…)。1号から50音順に日本独自の名前を付ける、1号「愛子」 2号「一郎」 3号「歌代」 …などというのはどうでしょう。「9月30日に日本列島を横断した“愛子”は、各地に大きな爪痕を残し……」などと言われては、人間の愛子さんにはいい迷惑ですか……。

      貴船菊(秋明菊) / もみじの虚から生えた茸    マウスを載せれば写真が変わります
 今日は、雨は降るし、風はあるし、おまけに暗くて、とても写真が撮りにくかったです。風に揺れる花などを撮ろうとしても早いシャッター速度が選べないし、油断をするとカメラが濡れてしまいます。
 六阿弥陀の巡拝に来られた方々には、「どうしてこんな雨の中、特に何もないのに写真を撮っているのだろう」と思われたことでしょう。
 自坊の前では、貴船菊が咲き出しました。
 ピンク・白、八重・一重といろいろな種類がありますが、ボクはこの白が一番好きです。この白い部分は花びらだと思っていましたが、本当は萼なのだそうです。ガクッと来ました。
 「貴船菊」という名前は、牧野富太郎博士によって命名されたそうですが、ボクが子供の頃は、植物図鑑というと博士の手になるものでした。博士は95年間の生涯に、2500種類以上の植物を命名されたそうです。独学・苦学の研究者としても有名ですね。
 貴船菊は、よく揺れました。カメラのファインダーから揺れる貴船菊を見ていて、酔いそうになりました。


      菊  の  香  や   垣  の  裾  に  も   貴  船  菊        水原秋桜子



   お茶の花    マウスを載せれば写真が変わります
 本堂裏の生け垣に、お茶の花が咲き出しました。
 雄しべが大きくボリュウムがあって、ただでさえ重たそうなのですが、雨に濡れた今日は一際重たそうに見えました。また、黄色い花粉が雨に流されたのでしょうか、白い花弁が黄色く染まっている花もありました。
 どうしてここにお茶の木が? きっと、お茶を作ろうと思って、歴代の誰かが植えたのでしょうね。ボクの子供の頃は、自坊でも大きな鍋で緑の葉を炒って、番茶を作っていました。今でも5月頃になると、この生け垣の新芽を摘みに来る方がおられます。摘み立ての新茶を作られるのでしょうか。うまくできたでしょうか?
 お茶の花は、12月頃まで咲いています。ご覧になったことがない方は、紅葉見物の時にでも探してみてください。


       茶  の  花  に  暖  か  き  日  の  し  ま  ひ  か  な       高浜虚子