9/30版 


台風一過の午後の境内  マウスを載せれば写真が変わります
 台風上陸記録を更新して8個目とした台風21号は、夕べ9時半頃には京都市南部あたりを通り過ぎました。
 風雨はそれほどでもなく、気がついたら北陸のほうへ行っていたという感じで、京都府下でも数か所で土砂崩れや床下浸水が起きた他は、大きな被害はありませんでした。
 ニュースによると、今回の雨台風による土砂災害などのために、20名以上の方が亡くなるか行方不明になられました。あらためて自然の脅威を思い知らされます。
 今年、こんなに台風が多く、かつ勢力が強いのは、台風が発生するフィリピン付近海上の大気の流れが激しくなっているからだそうです。何度も上陸する台風がもたらす豪雨や地震で地盤が緩んでいることも、被害を大きくしている原因です。
 この夏、京都でもゲリラ的な激しい雨が度々降り、真如堂の境内の表土もかなり流されました。8月の雨で荒れた自坊の庭も、直してはまたどしゃ降りの雨に痛められという状態です。こんなことは、いまだかつて経験しなかったことです。
 今年1年だけのことなのか、温暖化が進むにつれて毎年再現されることなのか…不安ですね。


      十  六  夜  の  曇  り  に  力  抜  け  に  け  り       みどり女


   一面に落ちているオオバモクゲンジの実 / 拡大写真    マウスを載せれば写真が変わります
 台風一過の晴天を期待していたのですが、午前中は曇り時々時雨れ。ようやく午後から晴れ間が見られるようになってきましたが、台風が戻ってきたのかと思わせるような強い北風がしばらく吹き荒れました。日陰にいると、何かを羽織っていないと、ちょっと涼しすぎるくらいです。
 台風の後は、いろいろなものが落ちています。
 9/17のこのページで、オオバモクゲンジの花が咲いていると書きましたが、早くも風船カズラのような実がなり、それが昨日の風で木の下一面に落ちていました。
 まだ熟していないのにかわいそうですが、こんなに落とされるのは風の抵抗を受けやすい形をしているからでしょう。実を持ち帰って開けてみたら、中の種はまだ出来たての初々しい浅緑色でした。
 銀杏ぎんなんやドングリも落ちています。塔の横にある銀杏いちょうの木は、数年前に大きく枝を払いましたので、あまり実がついていませんが、それでも拾う気になれば数十個を収穫できます。
         銀杏の実 / 水たまりの中のどんぐり    マウスを載せれば写真が変わります
 枝が茂っていた頃、台風などの後にはバケツ数杯分の銀杏ぎんなんが拾え、そのことを知っている人が朝早くから来られ、皆で競うように拾いました。
 銀杏の外側の黄色い実を剥くには、足で踏んだり、中には洗濯機に放り込むという荒手の人もおられますが、土に埋めて腐らせるという省力的方法もあります。
 ボクは人にも増して銀杏にかぶれやすい質なので、土埋め法が一番無難。目の色変えて拾っても、いったん土に埋めてしまうと、掘り出して食べるのも面倒になり、翌春には銀杏の幼木の林ができたこともありました。
 銀杏は食べ過ぎてはいけないと言われます。ビタミンB6欠乏症状のような中毒症状を起こし、重篤な場合には痙攣して意識を失うこともあって、死亡例も報告されているそうです。人によっては5〜6個程度でも中毒症状を起こし、特に幼児には食べさせてはいけないと言われます。
 旬の銀杏ぎんなんはお酒にもピッタリ。「子供は食べたらあかんよ(いけないよ)」と案じるふりをして制止し、独り占めしましょう。


     ぎ  ん  な  ん  の   さ  み  ど  り  ふ  た  つ   消  さ  ず  酌  む      堀 葦男


    朝日の光の中の芒の穂 / 萩の群生    マウスを載せれば写真が変わります
 萩もそろそろ終盤にさしかかってきました。今年の萩は、なんとなく色が冴えない気がします。
 木槿はまだ咲いています。6月末から咲いていますが、いくら何でも明日から10月。もうそろそろ引退させてあげたいです。長い間ありがとう。
 金木犀の花が咲き出しました。まだ木の側を通りかかっても咲いているとは気づかない程度ですが、急に漂ってくる匂いにハッとして、「あ、咲いているんだぁ」と気づかされます。
 「咲いているよ!」と、匂いでこんなにも主張するのは、金木犀と山梔子くちなしぐらいでしょうか。
 境内の木々の中には、秋の装いの準備を進めているものもあります。明日から10月。最高気温は25℃を、最低気温は15℃を下回り始め、ますます秋が深まっていきます。紅葉の準備も一層進むでしょう。
 知恩院では山桜が、松尾大社では八重山吹が咲いていると聞きますが……。

   藪豆の花    マウスを載せれば写真が変わります
 可愛い花でしょう。藪豆やぶまめです。
 くずを一回り小さくしたような蔓性の植物です。
 地下に豆があるので、取っても取ってもすぐにまた生えてきて、他の植物に絡み、本当に始末の悪い蔓です。
 こうして花を咲かせているのは、草引きの間隙をぬって生き残った蔓。それがこの可愛い花を咲かせているのです。
 実は、この憎き蔓の地下の豆は甘栗のようにホコホコしていて、煮たり、ご飯に混ぜて炊いたりして食べるととても美味しいのだとか。
 『おもいっきりテレビ』によると、藪豆は「タンパク質、ビタミン、ミネラルなどが大豆に負けない位豊富に含む。特にカリウム、カルシウムが多く、血圧を安定させ、細胞の働きをよくする為、病気になりにくい身体を作る」のだそうです。
 ただ、土を掘って豆を採るのには大変手間がかかって、腰が痛くなるほどとか。
 この藪豆のことをアイヌ語では「エハ」または「アハ」と呼び、北海道各地に藪豆の唄が残っています。

エハ チャラケ コラチ (藪豆 撒く ように)
   スマ チャラケ コラチ (石ころ 撒く ように)

   (静内)

エハ ウクアン ヤ イ ナクワ (藪豆あれば 私は帰らないよ)
   エハ イサムア タネ ク サン (藪豆なけりゃ 私は帰る)
 エン コ トゥルセ トゥルセ (おいらに 飛んでこい 飛んでこい)

   (長万部)

エハ エハ エハ エハ (藪豆 藪豆 藪豆 藪豆)
   カムイ カムイ カムイ チャッチャリ (神様 神様 神様 掘り出して)
 コラチネ アリキナ (たくさん 出てこい)

   (屈斜路)


 こんなに歌われるぐいらなのですから、貴重な食料であったとともに、さぞかし美味なること疑いなし! 食欲の秋、もう少ししたら、掘り出してみましょう。
 涼しくなってきました。体調を崩している人も多いようです。ご自愛ください。

都合により、1日早く更新させていただきました。