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木槿の咲く参道を歩く人
 「炎暑」「酷暑」という文字が、新聞やテレビで躍ります。「褥暑じょくしょ」という言い方もあります。
 40度という最高気温にはビックリしましたが、35度にはもう慣れっこ。
 戦後最高の猛暑と言われるのが1994年。全国規模で長期間続いたのが特徴で、京都39.8度、大阪39.1度、神戸38.8度の各都市の最高気温も、この年に記録されました。
 今年、この記録が塗り替えられる町がいくつあるでしょう。
 今日は気象庁のホームページまで不調。まさか暑さのせいではないでしょうね。
 境内の木槿むくげの花も今が盛りのはずですが、今年の花は明らかに小さく、精彩を欠いています。きっと、小雨の影響でしょう。柔らかくてたっぷり水分を含んでいるような木槿の花が元気に咲くには、今年は雨が少なすぎます。


本堂の軒の下には涼しい風が吹いてきます
 街中に比べると、境内は少し涼しいように思いますが、この暑い中を出かけようとする人が少ないのか、境内でもほとんど人影を見ません。
 焼けたアスファルトから境内の石畳に歩を進めても、暑さはあまりかわりませんが、もみじに覆われた参道に入ると、体感温度は下がります。
 歩いて来られたご婦人も、木陰の中に入ると、差していた日傘をしまって、緑のシャワーを体に受けて楽しんでおられるようでした。
 大きな本堂の中はとても涼しく、しばらく座っているとスゥーッと汗が引いていきます。
 ボクが子供の頃には、この本堂の中に机を並べて勉強をしている学生さんの姿を見かけました。まだ襖一枚で仕切られた間借りの下宿で、エアコンなど当然ない頃の光景です。
 少し前までは、蝉取りの子供を境内に何組も見ましたが、最近は夏休みに入っても、蝉取りをしている子供を見かけません。麦わら帽子ではありませんが、「どうしたんでせうね?」

      大   き   な   木   大   き   な   木   蔭   夏   休   み       喜代子



吉祥院の紅白の百日紅
 来週1週間も、晴れて35度程度の気温が続くそうです。
 「梅雨明け十日」。梅雨が明けてしばらくは安定した晴天が続き、本格的な夏型の気候となるという意味です。
 25日は、本堂で「宝物虫払会(虫干)」が催されます。
 京都の梅雨明けは、平年では19日。25日はまさにこの「梅雨明け十日」の最中です。
 また、土用入も20日頃。梅干しの土用干しなどは、「梅雨明け十日」のお天気の安定した頃に行われるわけで、理に適っています。
 「宝物虫払会」では、 『真如堂縁起絵巻』(公開されるのは写本)や『寒山拾得』『安倍晴明蘇生之図』など、当寺所有の寺宝約200点が本堂に吊されます。
 そもそも宝物に風を通して虫を払うことが目的で、見ていただくための行事ではありません。ですから、掛け軸などがズラッと吊してあるだけで、誰が書(描)いたものであるかなどの説明は特になく、近くに置いてある箱に書かれた文字を頼りに、閲覧する人が自分で判断していただかなければなりません。
 真如堂は、何回も移転を繰り返したためか、宝物も多くありませんし、内容的にも玉石混合。

竹垣の蝉の抜け殻
 面白いものでは、「ヘイサラバサラ」「ケサランパサラン(ケセランパサラン)」。どうしてこんなものが寺宝に…。
 「ヘイサラバサラ」は、直径4センチほどの光沢のある玉。どうやら、牛の内臓の中にあって薬用になる「牛黄」、馬の腸に発生する馬宝石ということらしいのですが…。
 「ケサランパサラン(ケセランパサラン)」は、毛が渦巻き状になった直径3センチほどのもので、白粉おしろいを食べて育つと言われています。妖怪の「毛羽毛現けうけげん」だという説、植物の「タンポポモドキ」説、昆虫説、食べられた動物の毛が排出されて固まったものだという説などがあり、「拾った人は一生幸福に恵まれる。キリ箱に食べ物の白粉を入れ、神棚に祭り、年に1度しか見てはいけない。2度見ると幸せが逃げる」などと信仰している地方もあるそうです。
 調べれば、ケサランパサランの製造法の特許を持っている人、同名の化粧品を販売している会社なども出てきて、泥沼に入っていきそうです。

もみじ越しにまだらに差し込む夏の光
 「枇杷湯」の無料接待もあります。「枇杷湯」は、暑気払いの夏季の飲料として古くから伝わるもので、肺・胃・気持などを爽快にさせる処方が施されていると云われています。
 文化財を観賞するというのではなく、夏の風物詩に触れ、自然の少し涼しい風を楽しむようなつもりでお越し下さい。本堂の軒先でボーッとしているものいいですよ。
 公開は9〜3時、雨天中止です。
 鹿ヶ谷の安楽寺では、「かぼちゃ供養」もいとなまれます。そちらへもどうぞ。
 熱中症などにご注意下さい。食欲が落ちている方は、なおさらご用心下さい。

      片   陰   の   いらか   冷   た   く   蝉   越   ゆ   る      欽一