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本堂の軒越しの青空
 近畿地方は13日に梅雨が明けました。平年より6日、昨年より19日早い梅雨明けでした。
 今年は「少雨高温」の空梅雨で、梅雨入り後の京都市内の降水量は平年の約60%。梅雨入り後の6月中では平年の7割程度で、その半分近くは2度の台風がもたらした雨でした。また、7月に入ってから梅雨明けまでの降水量は、平年の約25%だけ。
 「梅雨が明けた」と言われても、雨が降ったという実感がないので、あまりピンと来ません。
 雨が少なかったということは、晴れて気温が上がった日が多いということで、6月中の平均気温は24・4度。観測史上で最高でした。7月に入ってから、35度を超える真夏日は6日。当分は酷暑の日々が続くでしょう。
 京都の夏は、風が弱くて熱気が溜まりやすく、夜は風が吹くことがほとんどないために熱帯夜になることが多いのが特徴ですが、近年、ヒートアイランド現象も加わってさらに夜間の気温が下がりにくくなっています。
 今年も30日ほど熱帯夜になるのでしょうか。暑くて寝苦しく、寝不足ぎみ。昼間、少しじっとしているとウトウトしてしまいます。


百日紅と三重塔。夏の暑い年は百日紅がよく咲くとか
 暑さは厳しいですが、雨が少なかった分湿度が低く、木陰などに入ると涼しくて、例年よりは過ごしやすい気がします。
 雨が少なくてよかったことがもう一つ、蚊が少ないことです。自坊は2方を墓地に囲まれていることもあって、境内の中でも最も蚊が多い地域です。
 雨が少ない今年は、墓地の花筒や水鉢でのボウフラの発生が少なく、例年だと草引きなどをするのに蚊取線香を両側から点けて腰にぶら下げたりしなければならないところが、今年はそこまでの必要がありません。助かります。
 でも、この酷暑のままお盆に突入したのではたまりません。夏の暑いか涼しいかは、体力勝負のお盆の「難易度」を大きく左右します。何とか、涼しくなってくれないかと、雨乞いでもしたい気分です。

      炎   天   の   地   上   花   あ   り   百   日   紅       虚 子



涼しい風が渡る緑陰
 今日は祇園祭の宵山。明日は巡行です。
 他府県にお住まいの方は、京都全体が祇園祭一色だと思われて、「お忙しいでしょう?」と心配して下さることもあるのですが、境内は至って普通。
 祇園祭は八坂神社の祭礼で、忙しいのは四条烏丸界隈の各鉾町の氏子の方々や観光産業に関わっている人たちだけでしょう。
 よく知られているように、祇園祭は平安時代に疫病が流行した時、その怨霊退散を願って始められた「祇園御霊会」が起源とされています。7月1日の「吉符入り」から、31日の「疫神社夏越祓」まで、1ヶ月にわたっていろいろな神事がくり広げられます。
 今は7月17日に行われる巡行も、明治21年(1888)に太陽暦が採用されたことにより、17日(先祭)と24日(後祭)となり(以前は旧暦6月7日と14日)、さらに昭和41年(1966)に今のように17日に統合されました。
 いずれにしろ、梅雨がまだ明け切らないうちに執り行われるわけですが、もともと祭の起源となる疫病が流行したのは、高温多湿な梅雨が原因だったのでしょう。
 32基の山鉾は、蔓延する疫神を集める依代よりしろとして、各町内を巡行します。ですから、鉾は巡行が終わると、せっかく集められた疫神が四散しないように、すぐに解体・収納されるのです。

鬼百合と自坊の門
 「しばらくそのままにしておいて、見せて欲しいなぁ」と思われるでしょうが、祭礼の目的自体に関わることですから、そういうわけにはいきません。
 そして、鉾が各町内を巡行して清めた後の17日夕方、八坂神社の祭神が神輿にのって寺町四条の御旅所に渡られます(17日4時の神興祭。御旅所から八坂神社に戻られるのは27日還幸祭)。
 このことを知っていると、ただ動く美術館のような鉾が都大路を行き来する祭ではなく、もっと奥深いものを感じることが出来るでしょう。

 今夜の宵山には、何万人の人が繰り出すのでしょうか。15日の宵々々山には19万人、15日の宵々山には31万人が、歩行者天国となった四条通や烏丸通界隈の鉾町に繰り出しました。今夜は、さらに人出が増え、50万人ほどになるのではないでしょうか。
 生の祇園囃子があちこちから聞こえ、呉服屋さんなどの出店や露店商の屋台なども賑やかです。また、各鉾町の町家では、家宝の屏風や什器を表座敷に並べ、道行く参観者に披露する「屏風祭」も行われます。
 この雰囲気は巡行とはまた違い、むしろ宵山などの方が祭礼らしいかも知れません。
 といっても、ボクはもう10年以上、宵山などに行っていませんし、山鉾巡行は未だかつて見たことがありませんので、見てきたように書いているだけです…。

      押   し   返   す   我   も   邪   険   や   鉾   を   見   る      静 子



総門前の石碑と木槿
 京の夏の味といえば、鱧。祇園祭が始まる頃、鱧は旬を迎えます。祇園祭は「鱧祭」と呼ばれます。祭の客を接待する料理の中には、必ず鱧の落としや鱧寿司など鱧料理があるでしょう。
 でも、祇園祭の頃まで鱧は高値。祭が終わると、値も下がります。鱧まで、祇園祭値段なのでしょうか?
 また、京の祭には鯖寿司がつきもの。ボクのところにも、四条界隈の親戚から、鯖寿司が届きます。
 昔は、祇園祭になると、京都の中京や上京の商家に取引先が鯖寿司をもって中元の挨拶に行き、挨拶を受けた商家は手土産に鱧寿司を返すという習わしがあったようです。
 人だらけで、とにかく蒸し暑くて、しょっちゅう夕立に見舞われる宵山。テレビの中継で祭の人混みを見ながら、ビールでもいただきましょう。鯖寿司、早く来ないかなぁ。
 ボクにとっては、毎晩が「酔山」。今日一日だけの限定ではありません。


      梅  干  し  て  人  は  日  陰  に  か  く  れ  け  り       汀 女

 19日は土用の入り、21日が丑の日。22日は大暑。そろそろ暑さもピークです。ご自愛下さい。