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木陰にいるとまだ少しは暑さもマシです
 ここ1週間の京都の平均最高気温は34.4度。梅雨とは思えない猛烈な暑さが続いています。
 本格的な雨が少なく、地面はカラカラ。京都府南部の京田辺市では、6月26日に5ミリの雨が降って以来、連日ゼロを更新中とか。 湿度が低いので少し過ごしやすいですが、熱中症などが心配されます。
 気温が上がると、ビールの消費が増えたり、エアコンや水着などの夏物関連商品の売り上げが増えるなど、経済効果は抜群とか。関連業界には「恵みの暑さ」なのでしょうが…たまりません。
 とにかく雨が欲しい! 普段なら、梅雨の最中にこんなこと思わないのですが、境内の木々には水切れの兆候が出ているものもあるので、心配です。


これからが暑さ本番。蝉の声も余計に暑さを感じさせるようになります
 朝4時過ぎ、ようよう白み始めた頃、寝苦しくてうつらうつらしていると、ニイニイゼミの声の向こうから、「カナカナカナカナ…」というヒグラシの声が聞こえてきました。
 朝夕の涼しく薄暗い時は「カナカナカナ…」、陽が高くなると「シャンシャンシャンシャン」(クマゼミ)、そのベースに「チー…ジー…」というニイニイゼミの声。アブラゼミの「ジジジジジ…」といういかにも暑苦しい鳴き声は、今年はまだあまり聞こえてきません。
 写真を撮りに境内を散策していて見かけた蝉殻は、ほとんどがニイニイゼミのものでした。
 蝉もこれからが本番です。

     石灯籠で涼むミーコ   マウスを載せれば写真が変わります
 本堂前の石灯籠の火袋の中で、ミーコが寝ていました。
 写真家の永野一晃さんの二番煎じの写真ですが、いかにも気持ちよさそう。時折、寝返りをしながら、すっかり安心して眠っていました。
 職員の人が声をかけると、ミーコは急いで燈籠から飛び降りて後を追い、何か頂戴とおねだりしていました。そして、職員の人が与えた一握りのキャットフードを食べ、別の方向へ消えていきました。
 職員の話によると、ミーコは、この夏、石燈籠がまだ熱くならない朝方を、この火袋の中で過ごすことが多いそうです。
 話の中で気がついたのですが、職員の中には「ミーコ」と呼ぶ人と、「ミキちゃん」と呼んでいる人がいるようです。本当の名前は何でしょう? 名前はまだない?
 それを聞いて、以前友人から聞いた、「うちのおじいさんは、以前、寝言で女性の名前を呼んでしまって、おばあさんと大もめになったことがあった。それからしばらくして、おじいさんは猫に女性の名前をつけ、寝言で呼んでも『猫の夢を見ていた』と言い訳できるようにしていた」という話を思い出しました。

     屁糞蔓の花   マウスを載せれば写真が変わります
 境内では、木槿むくげの花が長い盛りに向かって、その花数を増やしています。
 その頃になると、「あの花はまだかなぁ」と、木槿そっちのけで探す花がボクにはあります。屁糞蔓へくそかずらです。
 木槿はよく目立って皆の注目を浴びますが、毎年その枝に左巻きに絡んで花を咲かせる屁糞蔓に目をとめる人はほとんどいません。
 葉や茎全体に悪臭があることからこんなにひどい名前がついていますが、虫も寄りつかないともいいます。また、馬も嫌がるので、「馬食わず」ともいわれるらしいです。でも、これよりもっと臭い植物はいくらでもあるのに、どうしてこんなにまで言われるのでしょう。万葉の時代からすでに「くそかずら」です。
 この花を「お灸だ」といって皮膚に付けたりして遊んだ方はありますか? 「灸花やいとばな」という別名もあります。また一方、花の形が早乙女の傘に似ているというので、「早乙女蔓さおとめかずら」の呼び名もあるそうです。
 屁糞蔓と早乙女蔓、同じ花の呼び名として違いすぎませんか? 屁糞はあんまりですが、早乙女は褒めすぎの気もします。

      名  を  へ  く  そ  か  づ  ら  と  い ふ  花  盛  り      虚  子




簾を吊した自坊の中庭
 7日は「小暑」でした。梅雨明けが近く、本格的な暑さが始まる頃です。
 梅雨明けまで吊すのを待っていた簾ですが、ジトジトした鬱陶しいお天気はもう来そうにもないので、先日吊しました。
 打ち水をすると、路地を渡って簾越しに入ってくる風も涼やかです。
 東京では、100万人が同じ時間に打ち水をして、「みんなの手で、都心の気温を2度下げよう」という試みが、8月に行われるそうです。気化熱で気温を下げるだけではなく、地表の局所的な温度変化によって気圧が変わり、風も起きるというのです。
 嘘のような話ですが、去年は30数万人が参加して1度下げた実績があるそうですから、ビックリ!
 ビルの屋上の空きスペースに木や草花、芝生などで緑地を造る「屋上緑化」の取り組みに補助金を出す自治体も出始めています。

蜘蛛の巣にかかった水玉と万両の花。せめて涼しそうな写真を
 兼好は『徒然草』の中で、「家の作りやうは、夏をむねとすべし。冬は、いかなる所にも住まる。暑き比わろき住居は、堪へ難き事なり」と述べています。
 昔の家にはもちろんエアコンなどありませんから、自然をうまく取り込みながら、暑さ寒さをしのいできました。それでも、夏の暑さを乗り越えるには、家を夏向きに作るべきだといっています。
 今の家は、高気密・高断熱で、外の世界から家の中を遮断して、中だけを快適にしようという考え方。自然と調和するか、自然を克服するかという、根本の思想が違っています。
 簾、よしず、風鈴、打ち水、屋上緑化・壁面緑化、そんな工夫次第で、エアコンを付ける時間が1時間でも短くなるかも知れません。まさか、ミーコのように石灯籠の中に入るわけにもいきませんので。
 夏本番、食中毒にもご用心下さい。