7/2版 



菩提樹の葉の隙間から差し込む夏の陽
 真夏のような陽射しと気温。天気の不安定さだけが、まだ梅雨であることを教えてくれている気がします。
 今日の最高気温は33℃。でも、比較的湿度が低いので、木陰にいると案外爽やかでした。
 また台風が近づいています。先の台風では滋賀県内で飛ばされた屋根が架線にかかって新幹線を止めましたが、今度は静岡県内の記録的集中豪雨がまた新幹線をストップさせました。大動脈の新幹線って、こんなにも弱かったのでしょうか。
 今年の梅雨に雨が降ったのは、前線そのものの仕業より、週1ぺースでやってくる台風絡みばかりのような気がします。
 こういうのは男性的というより、それを通り越して“K−1”的とでも呼んだらどうでしょう? あるいは、これぞまさしく女性的かな? 失礼。
 ともかく、今度の台風は被害が出ませんように。

 数日前から、クマゼミが鳴き出しました。「シャンシャンシャンシャン」というクマゼミの鳴き声は、他のどの蝉より夏っぽい気がします。
 子供の頃、蝉取りの“釣果”で最も自慢できたのは、ツクツクボウシでした。透明な羽根とスマートな形が美しく、すばしっこく、人の気配を敏感に察知して捕まえにくいツクツクボウシは、子供の頃、垂涎の的でした。

木陰にはいると涼やかな吹いてきます
 また、大きくて透明な羽根を持ったクマゼミは、虫籠の中での存在感も圧倒的で、ツクツクボウシに次ぐ値打ちがありました。
 ところが、最近はクマゼミが捕れ過ぎて、年によっては「またクマゼミかぁ…」ということもあります。
 ボクも長じてからは蝉取りを夏の日課としていませんから、「今年の蝉の傾向は…」と語ることはできません。でも、境内を歩いていると、だいたいの様子が聞き取れます。
 数年前に初めて知ったのですが、クマゼミは南方系のセミで、少し前まで、箱根の山を越えることができなかったそうです。当然、東京などでも見られなかったのが、最近は千葉や茨城でも発見されているとか。
 クマゼミが京都で増えたのも、箱根を超えて北関東の方に生息域を延ばしているのも、温暖化が原因と言われています。
 最近の真夏の最高気温も半端じゃありませんし、こんなに雨が少ないと砂漠化傾向にあるのかと心配になります。
 男性的でも女性的でも、オカマ的でもかまいませんから、もう少し梅雨らしいお天気を、勝手を言いますが2〜3日だけで結構ですから味わってから、夏本番を迎えたいものです。


夏の陽を跳ね返す木槿の花
 夏の花 木槿むくげが咲き出しました。まだ梅雨の最中ながら、この炎暑は木槿の花にふさわしいと感じます。
 市街地ではもうすでに満開になっている木もありますが、境内は咲き始めたばかり。これから9月頃まで咲き続け、花の少ない盛夏に彩りを添えてくれる有り難い花です。
 境内には10種類以上の木槿があります。木槿は古くから愛好され、たくさんの園芸品種ができたようです。
 夏の代表的な茶花の一つで、「冬は椿 夏は木槿」と言われるほど。千家三代 宗旦そうたん(1578-1658)は木槿を好み、「宗旦木槿」という種類は今も人気のある種類です。
 木槿が韓国の国花であることはよく知られていますが、中国人は朝鮮半島を「槿域」「槿花郷」とも呼んでいたそうです。それほどたくさんの木槿が咲いていたのでしょう。
 韓国ではこの花を「無窮花ムグンファ」と呼んでいて、それが日本で「ムクゲ」という由来だとも言われています。「無窮花」、初夏から秋まで毎日新しい花を咲かせ続ける無窮の花。その生命力を讃える名前です。
 一方、中国の白居易は、「松樹の千年もつい是朽これくち、槿花の一日も自ずから栄を為す」と、木槿を一時の栄華の譬えに引用しています。
 日本でも、朝開いて夕方には萎んでしまうこの花は、はかなく、変わりやすいゆえに情趣深いとされてきました。茶花として珍重されるのも、花の姿形はもちろん、その儚さゆえもあるのでしょう。
 人ならじっと立っていられないような炎天下で、しおれもせずに一日中咲き続けるこの花に、ボクは他の花にはないような力強さを感じます。また、そんな目に遭いながらも、毎日毎日嫌な顔一つせずに花を咲かせ続けるこの花から、不屈の精神の大切さを諭されるような気がします。
 木槿のはかなさは、朝咲いて夕萎むというたった一輪のその日だけの様相を切り取ったもので、侘びの一壷天をしつらえるために語られる仮の姿のように、ボクには思えます。


      そ  れ  が  し  も  其  の  日  暮  ら  し  ぞ  花  木  槿      一 茶


まだ緑のアメリカヤマゴボウの実 / もみじの木から生えてきた茸。名前は…? (OnMouse)
 先日まで地味な花を咲かせていたアメリカヤマゴボウ。今朝見てみると、房の元の方から実に変わっていく途中。まだ、先の方には花が咲いているのに、元の方は実が付いている房もありました。なんと気の短い植物なのでしょう。これでは、花もゆっくり咲いてもいられません。
 アメリカヤマゴボウは、明治初期に渡来した北アメリカ原産の帰化植物。熟した実がつぶれると赤紫の濃厚な汁が出てきます。「インクベリー」とも呼ばれるそうで、子どもの頃はこの実で色水を作ったりして遊びました。
 この植物に、アルカロイド系の毒があるということを知りませんでした。新芽などは柔らかくて美味しそうですが、第二次大戦中の食糧難の時、この根を食べて嘔吐や下痢などの中毒症状を起こした人がかなりおられたようです。
 実も美味しそうですが、果たしてどんな味がするのでしょう? 実に毒があるかどうか知りませんが、試してみないほうがよろしいでしょう。
 少し日陰で、大きな茸を見つけました。注意して枯れかけた木の幹や地面を見ていると、結構たくさんの菌類が生えています。やはり、雨が少ないとはいっても、梅雨は梅雨ですね。
 茸は、うかつには食べられません。笑い転げるぐらいで済むなら、まだいいですが…。どうして食べる方ばかりに話の矛先が向くのでしょう…。

黒谷・西雲院さんの蓮の花2輪  (マウスを載せると画像が変わります)
 最後は綺麗にまとめましょう。
 今、京都の社寺で咲いている花は、桔梗、睡蓮、そして蓮などでしょうか。
 蓮は、夏の清涼剤、見るだけで心も澄ませてくれる気がします。
 ボクの朝の散歩コースの中で、夏の楽しみといえば、黒谷の西雲院さんの蓮の花。20ほどの蓮鉢に、それぞれ違う蓮が植わっています。
 「今日はどんな花が咲いているだろう」と思うと、それまでの長い石段も苦ではありません。
 朝とはいえ、夏の暑い最中に、どうしてこんなに澄んだ綺麗な花を咲かせることができるのでしょう。
 大きな蓮の葉や花が、台風の風に揺られて折れてしまいませんように。


      一   蝶   を   放   ち   て   蓮   華   浄   土   か   な     風 生