6/4版 


真夏のような陽射しの境内
 先週の週間予報では、今週はほとんど毎日雨が降り、週の半ばには梅雨入りするだろうということでしたが、大ハズレ! 雨の日など1日もなく、ここ数日は晴れの日続き。
 5月に五月晴れが少なかったのを、今になって取り返しているかのようです。
 日本付近の上空で偏西風が蛇行しているそうで、このような時は気圧配置の変化が少なく、当然天気の変化も少なくて、晴れているところでは何日も晴天が続くらしいです。
 でも、それも土曜日まで。あとの1週間、京都は毎日雨マークがついています。来週も、また天気予報が大ハズレになってくれないでしょうか。


鐘楼脇の紫陽花
 紫陽花の話題が、よく聞かれるようになってきました。
 30種、1万株の紫陽花が植えられている宇治の三室戸寺では、例年より10日ほど早く見ごろを迎え、5日から週末の夜間拝観が始まるそうです。
 かなり前に行ったことがありますが、あいにくの雨で、湿気が多く、ライトアップを楽しむどころではなかったことを覚えています。
 でも、雨が降ってこそ紫陽花もピチピチ元気。紫陽花が元気な時は、人間には過ごしにくい時なのかも知れません。
 境内の紫陽花の見頃は、もう数日先です。本堂正面の階段より右側あたりや、鐘楼堂の横あたりで見られます。
 ボクが通販で買って増やした奇種もありますから、どうぞご覧下さい。

     紫  陽  花  や  白  よ  り  い  で  し  浅  み  ど  り     渡辺水巴


今年はどうしたの? 本堂前の菩提樹
 ボードで菩提樹のことが話題になったので、今朝確かめに行きました。
 咲いていない…と思っていましたが、それどころか、蕾すらついていないのです。
 首が痛くなるほど上を向きながら樹の下を1周して、くまなく点検してみたら、樹全体でわずかに10ほど花の房がある程度。咲いているのは4房しか見つけられませんでした。
 一体どうしたことでしょう。こんなことは初めてです。
 例年なら、少し離れたところまで花の香りが漂ってきて、「あ、菩提樹咲いたんだぁ」と気がつくほどですが、これでは香りようがありません。
 樹下で呆然としていたら、犬に連れられた方に、「黒谷は満開ですよ。黒谷に行かれたらどうですか」と繰り返し勧められました。でも、黒谷の菩提樹を撮って、更新ページに載せてもなぁ…。
 真如堂と黒谷で気候が違うわけではありませんから、咲かないのは気候以外に原因がありそうです。なぜなのでしょう?
 菩提樹に少し遅れて咲く沙羅の蕾も点検しましたが、こちらもずいぶん少なめです。なぜだろう…なぜかしら…。


南天の花。この花は少し赤っぽいです
 墓地では南天の花が盛りです。
 南天の実がお正月の供花に使われることが多く、それがこぼれたり、鳥が運んで発芽したりして、墓地にはとてもたくさんの南天が生えています。
 よく見ると、白っぽい花や下の方が少し赤みを帯びている花があります。いっぱい付いている蕾が一度に咲くのではなく、上からでも下からでもなく、案外アトランダムに咲いているように思えます。花の下には、白い花片のようなものがたくさん落ちていて、それもまた趣があります。
 雨の多い時期に咲きますから、傘などを差し掛けてやると実の付きがよいようです。冬、実が赤く熟した頃には鳥除けにビニール袋をかぶせているのも見かけます。そうして大切にした実はどうされるのでしょう? 鳥に施してやった方がいいようにも思います。
 南天ははとことん強健な植物で、切っても切ってもすぐにまた芽を吹かせます。「南天」の名は「難を転ずる」の語呂合わせのようですが、そういう強靱さが起源かも知れません。材質も強く、そういえば昨日お越しになったお年寄りの杖は、南天製ということでした。
 赤飯などに南天の葉が添えてあったりするのは、南天の葉には防腐効果があるから。南天の実には咳止め効果のあるアルカロイドが含まれいるのだそうです。身近にある有用な植物ですね。


自坊に咲くホタルブクロ
 今朝の地元紙に、「ホタルが、京都市左京区の哲学の道沿いの疏水分流で舞い始めた」と載っていました。薄暗くなった7時半過ぎから、30匹以上の蛍が明滅しながら乱れ飛んでいるそうです。
 今年の哲学の道の蛍は例年より数が多いそうで、飛び始めてから10日間ぐらいが見頃とか。ということは、今月半ば前までは楽しめるということですね。
 自坊の庭で、ホタルブクロの花が満開です。「ホタルブクロ」という名前と蛍は関係があるのかないのか?
 「日本の植物学の父」と呼ばれる牧野富太郎氏は、この名の由来を「小兒其花ヲ以て蛍を包む故に蛍嚢の和名アリ」と記されています。
 蛍をつかまえてこの花の中に入れ、花の口をねじって潰すと蓋になって、捕まえた蛍を持って帰れたそうです。ホタルブクロには1本に数輪の花が咲きますから、そのそれぞれに蛍を数匹ずつ入れると幻想的な美しさになったとか。今はそんなことはできませんが、想像しただけで美しいですね。
 一方、「火垂ほたる(=火を垂れさげる)」が起源。ホタルブクロの花が提燈に似ているので、この名が付いたという説もあるそうです。
 虫の蛍の名前は、この「火垂る」が語源だそうですが、花の方はどうやら最初の説が正解のようですね。
 余談ですが、うちの住職は、若かりし頃、疏水の蛍を追いかけて、川の上の暗い宙を走ったそうです。結果は・・・。


     川  ば  か  り  闇  は  な  が  れ  て  蛍  か  な      加賀千代女



本堂脇の「傳教大師巡錫像」
 今日6月4日は、天台宗を開かれた伝教大師最澄でんぎょうだいしさいちょうのご命日です。
 大師は、766年近江の国でご誕生になり、比叡山を中心にして、法華経に基づいた、誰もがみな仏になれる一乗仏教を確立され、日本仏教の礎を築かれました。そして、822年の今日、57歳の生涯を閉じられました。
 比叡山に息づいた大師の教えは、法然・親鸞・道元・栄西・日蓮の各祖師たちに大きな影響を与えました。
 この像は西村公朝師が寄贈されたもので、伝教大師が東国を巡化される姿を表し、頭陀袋を下げて杖をついておられます。
 「怨みを以て怨みに報ぜば、怨み止まず、徳を以て怨みに報ぜば、怨み即ち尽く。長夜夢裏の事を恨む莫れ。法性真如の境を信ずべし」「我がために仏を作るなかれ、我がために経を写すなかれ、我が志を述べよ」「道心の中に衣食あり 衣食の中に道心なし」云々。
 末弟の私には重い大師の御遺戒です。