4/29版 



楓ともみじの新緑の競演
 今日から大型連休。全国的に快晴で、さい先のいいスタートです。
 連休中のお天気も後半は崩れてきそうなものの、まずまず。カレンダー通り休暇のとれる方にとっては、佳い連休となることでしょう。そうでない方にとっては、羨ましい連休でしょう。
 JTB京都支店が取り扱った旅行申し込みによると、今年の連休に国内旅行する人は前年比129%増、海外旅行は279%増。イラク攻撃や感染症問題などがあった去年より大幅に伸びているそうです。
 もちろん、京都の観光地にもこの連休には多くの方が訪れます。きっとあちこちで大渋滞でしょうね。
 それにしても、ここ数日はまた寒さが戻って、嵐のような風雨があったりと、大変でした。
 昨日28日、市内のホテルではビアガーデンがオープンしたとか。夜はことさら寒くて、ビールを飲む気分ではないでしょう。


新緑の間をすり抜ける陽の光
 境内の緑はますます濃くなってきて、生い茂ってきた感じがします。
 よく境内を散歩されている方々数人から、「今年はもみじの葉が多いのではないですか?」「今年の新緑はきれいなのではないですか?」という声を聞きました。
 確かにそうかも知れませんし、毎年そんなことを話し合っているような感もします。とにかく、今は新緑が最高です。
 いろいろな花の咲き具合などを見ていると、今年は去年より5〜6日早く季節が移ろっているようです。
 各所の藤が見頃の便りが聞かれますが、境内の藤はすでに先週の更新時には終わってしまっています。唯一、平戸ツツジが新緑の中に赤やピンクの色を添えていますが、それもピークを過ぎました。
 新緑と青空、緑の中から差し込んでくる陽射しがさわやか。そんな緑陰で、本を読んだり、絵を描いたり、はたまたお弁当を食べたり、イチャイチャしたりと、皆さん思い思いに過ごされています。


       新  緑  に  吹  き  も  ま  れ  ゐ  る  日  ざ  し  か  な        深見けん二



ナンジャモンジャの花って、こんなもんじゃ

 新緑ばかりでは更新ネタが尽きてしまいます。また、「何かないかなぁ」と境内をウロウロしてきました。
 本堂裏の薬師堂左奥の土塀際に「ナンジャモンジャ」の木があります。いつ咲くかいつ咲くかと、毎日見に行っていましたが、今日、どうやら咲いているらしい姿を見つけました。
 岐阜県東濃地方と愛知県・長野県の一部、長崎県対馬の北端のみに自生する珍しい木ですが、京都市西京区の洛西ニュータウンには約300メートルの間に約80本が植わった並木道があるそうで、先日の地元紙にこれらが開花していると載っていました。
 新緑を覆うように真っ白な花が咲き乱れ、雪が積もったと見間違えるほどに咲くそうですが、境内のナンジャモンジャの木はひょろ高く、また花もまばらにしか咲いていないので、なかなかわかりません。
 職員に、「ほら、あそこに咲いているでしょう」と説明しましたが、狐に摘まれたような顔をしていました。
 皆さんの中に、境内のナンジャモンジャを「この木でしょう!」と探し当てた人がおられれば、懸賞をお出ししてもいいくらいです。


甘い香りを放つ唐種招霊の花
 オガタマ(唐種招霊カラタネオガタマ)の花です。
 吉祥院の前を通ると、風向きや天気などにもよりますが、甘〜い匂いが漂ってくることがあります。匂いの主は、この花です。
 その匂いがバナナの香りに似ているので、「バナナの木」とも呼ばれるそうですが、ボクはメイプルシロップの香りに似ているように思います。
 この枝は神前に供えるのに使われたそうで、招霊おぎたまが転じてオガタマになったそうです。
 原産国の中国では「含笑花」と呼ばれているとか。花をご覧になれば、何となく、「あー、なるほどぉ」と思われるかも知れません。
 吉祥院の前を通られたら、匂いを頼りに探してみて下さい。ナンジャモンジャよりは簡単です。


卯の花

 ♪ 卯の花の匂う垣根に ホトトギス 早も来鳴きて…♪ の卯の花(うつぎ)です。
 おからを「卯の花」と呼ぶのは、色が白くて似ているからだそうで、また、旧暦の4月を「卯月」というのは、ちょうどその頃に花を咲かせるからだそうです(今年は閏年のためか、旧暦4/1は5/19です)。
 万葉集には卯の花を詠んだ句が24首あります。一番多く詠まれているのは萩の141首、次いで梅の119首。藤なども多いですが、今はあまり馴染みのない卯の花が24首も詠まれているのは多いような気がします。
 万葉集でもホトトギスとのセット詠みが多く、なんと、ホトトギスが出てくる歌は153首にものぼります。
 万葉人が情趣深いと感じた事象が、そこから読みとれる気がします。
 「テッペンカケタカ」と啼くホトトギス。名前はよく聞きますが、深山に棲む夏鳥なので、あまりその姿を見た人はないでしょう。そういえば、「東京特許許可局」と啼くのもホトトギスですね? ずいぶん表現の仕方が違いますが…。
 普通は「霍公鳥」または「時鳥」とも書きますが、その他にも、浅羽鳥・網鳥・文目鳥

苔とこぼれたつつじの花
・古恋ふる鳥・妹背鳥・歌い鳥・卯月鳥・勧農鳥・拘耆羅・拘枳羅・沓手鳥・沓直鳥・恋し鳥・早苗鳥・子規・賤鳥・蜀鳥・蜀魂・田長鳥・黄昏鳥・橘鳥・たまさか鳥・綱鳥・時つ鳥・杜鵑・不如帰・無常鳥・百声鳥・夕影鳥などと表現されています。あー、しんど。字を見ながら、意味を考えるのもおもしろいです。
 他の鳥の巣に産卵して卵を抱かせ、雛は仮親の卵より早く孵化して、仮親の卵を巣の外に落としてしまう。それもホトトギスの仕業です。
 そんなことを考えながら、樹や花、鳥を眺めると、起きてくる感動に奥行きが出てくる気がします。

皆 人 の 待 ち し 卯 の 花 散 り ぬ と も 鳴 く 霍 公 鳥ホトトギス 我 れ 忘 れ め や

       

大伴清縄

郭   公ホトトギス   一   声   夏   を   さ   だ   め   け   り

蓼 太



 5月1日は八十八夜、5日は立夏。五月晴れの休日をお楽しみ下さい。