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正面階段のこぼれ椿
 曇天と黄砂の影響で、今日は京都を取り囲む山々がぼやりとしか見えません。
 南からの風が吹きこんだ昨日は、最高気温も20度まで上がったのに、今日はそれより10度近く低い予報。温かかったり、肌寒くかったり。着る物に困ります。

 京都もそろそろ観光客が増えてきて、週末のホテルが取りにくくなってきているようです。
 今は、学生同士の卒業旅行や、大学への入学が決まった人の親同伴の下宿探し、あるいはセンター試験の後期日程を受験する人たちが多いのでしょうか、ガイドブックを持った若い人の姿が目立ちます。
 今まで、大名商売のようだった京都の観光。観光客の誘致などせずとも人が来て下さった時代は終わり、年々京都を訪れる人は減って、京都に“落ちる”お金も減少の一途だったようです。

    長谷観音前の椿一輪
 最近になって、ようやく危機感をいだいた行政や観光関連産業が、様々な新しい取り組みをはじめました。
 今夜から21日夜まで、東山山麓の青蓮院〜円山公園・八坂神社〜清水寺までの散策路約4kmに、清水焼や京銘竹、北山丸太など作った露地行灯約2,400基が設置され、夜の観光に彩りをそえる「花灯路」が催されます。
 嵐山や大原では温泉を掘削しています。嵐山ではすでに掘り当てて、旅館などの準備も整い、桜シーズンの人出を見込んでいるとか。大原は地下の大きな岩に阻まれて、前途多難なようですが。
 京都の街が活気づいていくのが楽しみです。

      待  つ  人  の  ゐ  る  明  る  さ  の  春  灯はるともし       片山由美子



    本堂北側の馬酔木
 境内では、椿、梅、山茱萸サンシュユ馬酔木アセビ・アシビなどが咲いています。
 桜の花芽はまだまだ堅いですが、1週間前に比べたら、確実に成長しています。もみじの新芽もまだ吹いてきませんが、紫陽花の芽は徐々に広がり、白山吹も緑が顔を出しました。
 今日、鴨川沿いを車で走っていたら、柳も新芽を出し始めていましたよ。
  京都では、寒さは「お水取りが終わるまでは…」「比良八講が終わるまでは…」などといいます。東大寺のお水取りが終わるのは14日。比良八講は26日。その間に、「暑さ寒さも彼岸まで」を挟んで、徐々にあたたかくなっていくのを、「この日が過ぎたら」「これであたたかくなる」と指折り数えているように感じます。


山茱萸もそろそろ見頃
 話を無理矢理 黄砂に戻します。
 「春の使者」ともいわれる黄砂。ご存じのように、中国北西部、黄河流域のゴビ砂漠やタクラマカン砂漠あたりから、3000〜4000kmの遠路をはるばるやって来ます。
 日本の約4倍もあるという砂漠にある、直径5〜50ミクロン(1ミクロンは1ミリの1/1000)の細か〜い砂は、冬の間にカラカラに乾燥します。そして、強風で巻き上げられ、上昇気流に乗って対流圏中層(自由大気)に達し、偏西風に乗って東へ東へとやってきます。最盛期にはアメリカに達することもあるというから驚きです。
 黄砂は別名「ツチフル」とも呼ばれ、春の季語にもなっています。
 「今年は花粉が少なくて安心」という方も、黄砂には用心しないといけません。黄砂はアルカリ性で毛穴を開かせてしまうらしく、肌の潤いを保つための機能が低い人は肌が荒れたり、アトピーの人には症状が悪化したりする原因の一つとなる場合があるらしいです。
 それでなくても、京都では3〜5月が一番空気が乾く時期らしいですよ。

墓地の2本の白梅と無縁塔。微妙に色が違います
 お彼岸の頃に吹く強い西風を「彼岸西風」、あるいは「涅槃西風」といいます。今年のお彼岸は17〜23日で、20日がお中日。涅槃会は2月の15日ですが(真如堂は月遅れの3月15日)、旧暦では今月5日でした。
 この黄砂を運んできた西風は、偏西風なのでしょうか? …よくわかりません。また、尻切れトンボです。

 「暑さ寒さも彼岸まで」
 正岡子規が、お母さんに、「もうお彼岸だというのにいつまでも寒いね」と言うと、お母さんは、「毎年よ。彼岸の入りに寒いのは」とお答えになったそうです。子規は、それをそのまま句にしました。「母のコトバ 自ら句となりて」という前書きのある句です。
 お母さんも子規も伊予弁でしょうから、実際は「さぶい」と訛っていたのでしょう。京都弁でも「さぶい」です。
 春本番まで、もう一息。上がったり下がったりの気温に、お風邪を召されませんように。

         毎  年  よ  彼  岸  の  入  り  に  寒  い  の  は      正岡子規