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大晦日、除夜の鐘を撞きに来られた人の波がひいて数時間後、本堂では1年の最初の法要「修正会」が勤められ、人影のまったくない静まりかえった境内に、読経の声が聞こえてきます。 真如堂に一般の方が初詣に来られるということはあまりなく、朝10時頃から一気に増えてくる人たちはほとんどが檀家の方。宿坊への年始の挨拶とそれぞれのお墓へ参られる人たちです。 今日、元旦の朝はおだやかな晴れの天気です。昨日の雨が大地を潤して、しっとりしています。 世界に目を転じると、戦いや飢餓などのために困窮している人々が大勢おられます。新年を祝うどころではなく、生存の危機の淵に立つ人々がおられます。 あらためて平和の有り難さ、不自由なく生きていることの貴重さを感じると共に、慎み深い正月にしたいと思います。 今年が魔事なく、無事な1年となりますように、人々が少しでも安らかに暮らせますように……。 十干はもともと植物の成長の過程を表したといい、甲は、甲冑の「甲」。固い皮をかぶっている植物の種が、それを破って発芽しようとしている状態。新しい動きが始まる年です。 十二支も本来は植物の成長過程を表すもので、中国・前漢の頃に、字の読めなかった人々に農業暦を使わせるために、十二の動物に割り当てたものだろうと言われています。 「申」は、植物が十分伸びきり成熟していく時期。「申」を「さる」としたのは、成熟して老いていく老人の容貌が猿に似ているからだとか。 ボクの駄洒落も負けそうな理由ですね。 甲申の年は、成熟して新しい動きが始まる年。様々な困難は、産む苦しみといったところでしょうか? ぜひとも、いい方向へ向かう新たなる年としていきたいですね。 「申年の申日に贈られた肌着を身に着けると病気が去る」「申年の申の日に身内の年下の女性に1日下着を身につけてもらい、それを半紙に包み、水引をかけ、たんすの奥にしまっておくと、年を取っても下の世話にならなくてすむ」「申の日にパンツを4枚送ると、死(4)が去る(さる)」や、「申の日にプレゼントされたパンツを身につけると、中風、がんなどを遠ざける」などという言い伝えが全国各地にあるというのです。 これまた、甲・猿・去るというところから来ているようです。 「赤」は古来より縁起のいい色、魔よけの色とされ、おへその下にある「丹田」というツボを赤い布で覆うと血行がよくなるといわれています。世界的にも、たとえばイタリアでは赤い下着をはいて年を越すと幸せになれる、中国では年男・年女が魔よけのために赤い下着を身につけるなどという風習があるようですよ。 こういうことを下着メーカーなどが見逃すはずがありません。トリンプは「申年・赤いパンツ」、ワコールは、「2004年申年縁起肌着フェア」と題し、赤色の下着や肌着のキャンペーン展開。すでに赤色の下着を販売するコーナーがお目見えしているデパートも出現。 比叡山をはじめとする天台宗の有名寺院と下着メーカーがタイアップして、ご祈祷済みの下着を販売するという話も漏れ聞こえてきます。 さらに話は脱線しますが、男性用の下着に「猿股」というのがあります。猿股は明治時代中期以降から用いられ、明治末期頃にはふんどしと入れ替わったそうです。 なぜ「猿」なのでしょう? どうやら、猿回しの猿にはかせた「股引」から生じた言葉らしいのですが……本当でしょうか。 猿股と股引とパッチはどう違うか? パッチは朝鮮語が起源らしく、猿股は短く、パッチは長く、股引は長短どちらも指すようです。 新年早々何の話をしているんでしょう。 平安時代の960年、都で悪疫が広まり、病にかかった村上天皇が梅と昆布のお茶を飲んで回復したということから、申年の梅は薬になると伝えられたようです。 一概に「申年の梅」といいますが、厳密には庚申の梅。 統計的に、申年は梅の不作傾向が強くて高値が予想され、梅が貴重だったこともそのいわれの一因のようです。 さて、今年初めての更新は、いつものことながら大きく脱線したものとなってしまいました。 今年も、四季折々の光景とたびたびズッコケる文章を、京都洛東より発信して、皆さまのお越しをお待ちしています。 どうかよろしくお願い致します。 酒 も す き 餅 も す き な り 今 朝 の 春 虚 子 |