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その後2日間は曇り空。でも、金曜日から雨が降り始め、今夕から明日にかけては雨。いよいよジメジメした季節の到来です。 本堂前の菩提樹が、ちょうど盛りです。遠目には、こんもりした木の色が少し変わったかなぁと感じさせる程度の目立たない花ですが、香りが「咲いてるよ」と知らせてくれます。 われわれが「菩提樹」と呼ぶ木が、インドにも中国・朝鮮にも、ヨーロッパにもあります。でも、これらは似て非なるもの。 インドの菩提樹は学名 Ficurus regiosa、クワ科の木です。私もインドに行った時に見ましたが、葉には光沢があって、樹も日本より大きかったと思います。 シューベルトの名曲「Der Lindenbaum」を「菩提樹」と訳したのは、音楽家の堀内敬三氏。学名 Tilia platyphillos で、日本の菩提樹と同じシナノキ科。写真で見ると、確かに葉の形が日本の菩提樹に似ています。ただ、花はリンデンバウムの方が、かなり大きいようです。 リンデンバウムは、中世ヨーロッパでは「自由」の象徴とされて、以後各地に広く植えられ、樹皮から繊維を取ったり、材木にして楽器や彫刻に利用するなどして、「千の用途のある木」とも言われているそうです。 南野陽子が主演の「菩提樹 リンデンバウム」という映画があるのですね。同名の主題歌を、加藤和彦が作曲していたりして…知らなかったです。 日本の菩提樹は、学名 Tilia miqueliana。シナノキ科の木で、12世紀頃、中国・朝鮮からもたらされたということです。 本堂前の菩提樹の下で、「数珠を作るので」と、一所懸命に実を拾っている方が時々おられます。でも、数珠屋さんで「菩提樹」と呼んでいるのは、この菩提樹の実ではありません。数珠にするには、この菩提樹の実は少し小さいですね。 菩提樹は、お釈迦さまがこの木の樹下で悟りを開かれた聖木。 沙羅は、長旅と病気で憔悴きったお釈迦さまが、弟子のアーナンダに、「さぁ、アーナンダよ。私のために2本並んだ沙羅の樹の間に、頭を北に向けて床を用意してくれ。アーナンダよ。私は疲れた。横になりたい」とおっしゃり、最期の説法の後、入寂された縁の木。 この木も、インドのそれとは、似て非なるもの。 インドの沙羅は、フタバガキ科の常緑高木で、学名 Shorea robusta。インド北部原産で、樹高30メートルに達する大きな木です。日本の沙羅は、学名 Stewartia pseudo-camellia。ツバキ科で、木の高さは10〜20メートルと、インドの沙羅には及びません。 花が似ていたので、夏椿を沙羅と呼ぶようになったとのことですが、平家物語の時代からそう呼ばれているわけでしょうか…それとも平家物語の作者は、釈迦入滅の物語から「沙羅双樹の花の色 盛者必衰のことはりをあらはす」と書き、物語が有名になってから夏椿を「沙羅」と呼ぶようになったのでしょうか? そんな時代に、誰もインドの沙羅を見たことはないでしょうし… 「沙羅」、ステキな響きの名前ですね。 カエルたちも、よく鳴いています。でも、モリアオガエルの産卵はまだ。毎日2、3度、卵塊はないかなぁと心配になって見に行っています。 「人間より、カエルのほうが大事なの?」と言われそうな最近の私ですが、爬虫類・両生類はきわめて苦手。縄が落ちているだけ、避けて通るほど…。 でも、モリアオガエルの産卵〜孵化は、自然の妙を思い知らされる感動的なイベントです。 あー、明日かな、明後日かなぁ。 これから京都旅行を予定されている方、京都の夏の蒸し暑さも少し本格化してきました。タオル地のハンカチをご持参下さい。 都合により、写真は6/13に撮影したものです。
16日早朝、吉祥院の前庭の小池で、モリアオガエルが今年最初の産卵をしました。 6/16 補追
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