2/9版
ロウバイを白くしたような感じの樒の花 |
暖かい日が続きましたが、今日から冷え込むとの予報。さにあらず。さほど寒くありません。早朝はどんよりと重たい空が低く垂れ下がっていましたが、お昼前からは時々時雨れながらも、時々晴れ間も出ています。
街では、受験がそろそろピークを迎えます。市内からの転出が続く京都の私立大学の入試は、ここしばらくが盛り。私立高校は、今日一斉に入試。緊張した面持ちの学生を見かけます。
境内の季節が動かないのには、もう諦めムードですが、梅は満開。沈丁花の蕾もかなり膨らんできました。
樒(シキミ)の花が咲いているのを見つけました。樒、皆さんはご存じですか? お墓などに供えたり、京都ではお葬式の時の供花として、花輪のように門口に並べたりします。縁起の悪い樹と思われるかも知れませんね。お寺では、密教の修法の時などに多用するので、必ずと言っていいほどどこかに植えられています。
この花、透明感のある淡黄色で、地味ながら、なかなか上品ですが、実は「毒物及び劇物取締法」の劇物に指定されるほどの毒性がありで、アニサチンという痙攣性の神経毒が含まれているそうです。「悪しき実」と呼ばれたのが略されて「シキミ」になったとか。
樒は独特の強い香りがします。これを乾燥させて粉にして抹香や線香にしたりもしますが、「抹香臭い」というのこの樒を燃やした香りだそうです。また、その「臭さ」が死臭も消すほどであったので、古代から墓などに供えられるようになったとか。清少納言は長谷寺にお参りしたときに僧侶が樒を仏前に捧げるさまを描いていますが、「木」に「密」と書きますから、密教と関係があるのでしょうか。
京都嵯峨、保津峡の奥に「樒ケ原」という場所があって、樒をとって京都に売りに行っていたようです。仏教や儀礼とは縁の深い樹です。
軒端の梅。前の木は関係ありません。後ろのつっかい棒されている木 |
真如堂の門前を少し行ったところに「東北院」というお寺があり、「軒端(のきば)の梅」という古木が植わっています。更新ネタを考えていて、この梅のことを思いだし、今朝、写真を撮ってきました。
こんなに近くに居ながら、実は咲いているのを見るのは初めて。「牛にひかれて…」ならぬ、「HPに引かれて…」。
東北院は時宗の寺。門前の駒札には、「当寺は、王朝時代に現在の今出川から荒神口に至る西側付近にあった関白藤原道長の法成寺の東北の地に建てられていたが、一条天皇中宮・上東門院藤原彰子の住まいであった。その院内の小堂に、彰子に仕える和泉式部が住んでいた。現在の東北院は元禄年間に、この地に再興されたものといわれる。本堂前の軒端の梅は、謡曲「東北」に因んで植えられたものである。根の周囲2メートル、樹高7メートル、地上1.7メートルで3支幹に分かれ、心材は著しく腐朽しているが、1本だけは元気。白色単弁の花を咲かせ見事なたくさんの実を結ぶ。−京都謡曲史跡保存会−」。
東国から上洛した旅僧が、東北院の梅を見ていると、その梅が和泉式部が植えた軒端の梅であると教え、「わたしは梅の主」と告げて、夕映えの花の陰に消える。夜になって旅僧が梅の木陰で式部のために読経していると、和泉式部の霊が現れ、昔の話をする。そして、ゆるやかに舞い、消える。僧も、はっと覚める…。謡曲「東北」です。
今ある梅は、もちろん和泉式部当時のものではありませんし、寺自体も荒れてしまって、とても謡曲に描かれた幽玄の世界を連想することはできませんが…。
こっちは苦沙彌自坊の梅。夕方にはこんな青空も |
軒端の梅は、京都では嵯峨・清涼寺や新京極・誠心院にもありますし、全国にも何カ所もあります。これは、高野聖や歩き巫女たちが日本中を語り歩いたためです。
朝から法要を勤めながら更新作業をしていたら、日が西に傾いてきてしまいました。3連休は法要三昧です。皆さんはお出かけですか?
ソルトレーク・オリンピックは今日が開会式。観戦に熱が入って、寝不足になられませにょうに。