元三大師観音籤(がんざんだいし かんのんせん)

観音籤は もろこしに相伝えて 観世音菩薩の化身つくらせ給う偈頌なりといえり
その吉凶禍福を決すること あたかも明鏡の物を照らしていささかも違いなきがごとし
本朝 殊にこの法を尊信して證を得るもの甚だ多し。これを元三大師に託するは 師もまた菩薩の応現なればなるべし げにや 一念といえどもその後を知らず 一紙といえどもその他を見ざる我が身凡夫は 事ごとに臨みて決せざること多きものなれば これによりて心を定め 直ちに観音大士の御告なりと信順したてまつらば 何事か決せざらんや
くだれる世の愚かなる人は疑惑いよいよ深きならいなれば それがために籤の利益もまた益々深からん


 元三大師良源は10世紀に活躍した比叡山の高僧です。沈滞期の比叡山にあって、第18代天台座主として、堂舎の復興整備、経済的基盤の確立、学問の奨励、綱紀粛正など、比叡山中興の事業を完遂し、恵心僧都源信など多くの名僧を育てました。また、霊験談や説話類も多く、篤い民間信仰を集めてきました。
 この観音籤は、ある夜、徳川家康の廟所を造営した天海僧正の夢の中に元三大師が現れ、「信州 戸隠山の神前にある観音籤を私の像の前に置き、願望あるものはこの籤によって吉凶禍福を知ることができる」と言われたというところに始まります。
 また、元三大師が観世音菩薩の化身であると言われているところから、「観音籤」の名があります。


 おみくじをひいて、【大吉】などの吉札が出ても慢心することなく、かえって心を引き締め、【凶】札が出たときは一層身を慎み、正道をゆくように心がけてください。
 お寺や神社でおみくじを引いて凶札が出た時は、利き腕と反対の手で木の枝などにその札を結びます。それは、利き手と反対の手でみくじを結ぶという困難な行いすなわち「行(ぎょう)」をして転禍為福とするためです。