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今日の真如堂?


 ここ2、3日の陽気で、桜の花が一気にほろこび始めました。
 染井吉野は、植えられている場所の日当たりなどの違いで、遅い木はまだもう少し、早い木は4分咲き程度になっています。塔の脇にあるしだれ桜は、もう5分咲きほどに。
 今日・明日の土・日では少し早いですが、来週の土・日では少し遅い目かも知れませんよ。

 本堂の左横の池の端では馬酔木の花が満開です。でも、今年は花数がとても少なく、去年付いた種がまだそのままでいっぱい残っています。昨年は、もみじにもたくさんの種が付きましたが、馬酔木も少雨などの影響で子孫を残さなければと危機感を感じたのかも知れません。

 春になって年度も替わるので、散らかりっぱなしの部屋を掃除していたら、1枚の絵はがきが出てきました。
 もう10年ほど前になるでしょうか、京都の風景を描いた絵の展覧会がどこかで開かれていて、そこに真如堂を描いたものがあったといって、その絵はがきを買ってきてくれた人がいました。
 絵はがきには次のような説明が添えられています。


「真如堂春宵」 井上 稔
「真如堂は私の子供の頃の遊び場のひとつでした。本堂の前の広場でよく野球や鬼ごっこをしたものですが、このあたりはいつまでもその頃のままで、いっそうなつかしく感じます。
 故野々内保太郎(実父、日本画家)のアトリエからは東に大文字山、西に青田山、正面には真如堂の森を見ることができました。
 その四季折々の美しさを目にしながら暮らしていたことを思いますと、改めてその場を絵にすることになった今、感慨深いものがあります。どのように表現しようかとずいぶん迷いましたが、亡き父母の墓前から見える三重の塔を中心に、後方に大文字山を配した図にまとめてみました。」

 実際にこの絵のように見える場所はありませんから、作者の創作でしょうが、春の宵の雰囲気を伝えてくれている気がします。

 境内を歩くと、春独特の匂いがします。ちょっとむせ返るような、あまりいい匂いではありません。ボクはこの匂いをかぐと、梶井基次郎の小説にある「桜の木の下には死体が埋まっている」という一説を思い出します。

 今年の京都の観光もいよいよ本格的に始動。
 また、親と一緒に手に一杯の荷物を持った新大学生と思われる人も多く見かけるようになりました。出会いと別れの季節ですね。