10/16版

今日の真如堂?


赤い葉が混ざり始めた桜

 「暑い」という言葉が似つかわしいここ数日。10月半ばでこんなに汗をかくなんて…。
 各地で桜の便りが聞かれますが、京都でも鴨川沿いの桜並木がいっせいに花をつけ、時ならぬ花見の記事が新聞を賑わせています。春の花より小振りで、色も白っぽいですが、腐っても桜。それなりに見せてくれますね。

 こんなに暑くても季節は着実に晩秋に向かい、境内の木々も少しずつ色づき始めています。ドングリや椎の実も落ち、やはり秋を実感させています。
 本堂からはこの時期恒例の「引声(いんぜい)念仏」の声が響いてきます。
 引声は、慈覚大師円仁(794-864)が遣唐使として中国に渡ったとき、五台山で伝授されたもので、この時伝承された常行三昧などとともに、日本における念仏の始まりだといわれています。
 一般に経文に節をつけて唱えるものを「声明(しょうみょう)」といい、引声もその一種ですが、「クミ由(ゆり)」「ツキ由」「和上(やわらあげ)」「和下」などの節回しは、通常の声明にはない引声独特のものです。真如堂でもこれを唱えるのは一年に一度。ゆっくりとした節が、10人の僧侶の声を余計にあわせにくくしています。
 引声法要は今日が結願です。


右側の枯れ枝が今回伐採した松の木

 さて、この写真。花の木が色づいたという説明のためのものではありません。
 真ん中の灯籠と右側の灯籠の間に高く枝を伸ばしている木、樹齢100余年の赤松の木です。数年前から枯れ始め、注射をしたり、菰巻きをしたり、枯れ枝をはらったりと、いろいろと手をつくしましたが、9月に入って急に葉の色が悪くなり、昨日、とうとう伐採することになりました。

 50年ほど前の写真を見ると、今は紅葉の名所の真如堂も、その頃は大きな松がたくさんあって、境内は薄暗く鬱蒼としています。台風でたくさんの松の大木が倒れ、その後、松食い虫でさらに多くの松が枯れ、結果として真如堂はモミジの名所になったという感じです。
 松食い虫は被害は甚大で、最後に残された大きな松が、昨日伐採した茶所前の赤松でした。


幹だけになって吊られる赤松

 引声の静寂を、法要が終わるのを待ちかねていた重機やチェーンソーが、一斉にけたたましい音を立ててうち破ります。
 重機で吊りながら、上の方から枝を払い、木は次第に小さくなっていきました。
 この樹下、たくさんの方がお抹茶を飲まれました。映画の撮影もありました。葉が樋に詰まって困るという一面もありました。今となっては寂しい限りです。

 伐採した松はいずれ床板などになって、また真如堂に戻ってきます。ひょっとして皆さんがお越しになったときに歩かれる廊下の板がそうかも知れませんよ。

 明日から寒くなるそうですね。調子を崩されませんように。