清 浄 心 身 身心を清浄にする 能 除 汚 穢 よく汚穢を除く 能 覚 睡 眠 よく眠気を覚ます 静 中 成 友 静けさの中に友となる(孤独を癒す) 塵 裡 偸 閑 多忙な中に一時の閑を作る(心を和ます) 多 而 不 厭 多くとも嫌だと思わない 寡 而 為 足 少なくても足りる(芳香を放つ) 久 蔵 不 朽 長い時間保存しても朽ちない 常 用 無 障 常用しても支障がない
私は「職業柄」というか、始終、お香の香りに囲まれています。そんな時、普通はそういうものから離れたいと思うのでしょうが、なおかつ自室で香を焚いたりします。まさに「多而不厭」「常用無障」ですが、「能除汚穢」の効果も更に活用したいものです。 『華厳経』には、「香を塗ると、精気を増進する。体を強壮にする。顔色を良くする。心を楽しくさせる」などと書かれていますし、西洋では乾かしたラベンダーで匂い袋を作って枕の下に入れると、偏頭痛を和らげ、眠りを深くすると考えられていたそうです。人は古くから香の薬効やアロマテラピィーを活用していたのですね。 日本にお香が伝わったのは、推古天皇3年(595)、沈香が淡路島に漂着したのが最初です。平安時代にはお香が大流行し、室町時代には香道誕生し、やがて茶道でも用いられるようになります。お香は仏教文化のみならず、一つの文化を形成してきたのです。 一説によると、江戸時代の初期、それまで丸薬の形だったお香を線形にする「お線香」の技術が中国から伝えられ、仏事にお線香を用いる習慣が広まったといわれます。 お香は薫じる=加熱することによって香りが発散します。お香を焚くと香煙が立ち昇ります。香りの成分は香煙の粒子に付いて部屋に広がり、壁面などに停まります。焚き終わった後でもその粒子から少しずつ香り成分が発散を続けます。これが「残り香」です。 お香の原料には、白檀や丁字、沈香、桂皮、大茴香、乳香、伽羅などの植物性香料や、麝香、竜涎香などの動物性香料、また合成香料などがあります。これらを微妙に調合して、お香ができるのです。でも、たとえば白檀でも、産地や採取時期、気候などさまざまな 「お香」と一口に言っても、線香・抹香・塗香・練り香・印香・コーン型・スティック型・渦巻き型など、たくさんの形があります。その中でも、皆さんに馴染みが深いのはお線香でしょう。 お経を唱えにいろいろなお家をお伺いしますと、使われているお線香には、正直言って、いい香りのする場合とそうでない場合があります。香り自体は好み次第ですが、たとえば、古くなって変色しているようなお線香は香りも抜けていて「煙」が出ているだけです。高い線香は目の玉が飛び出るほど高価ですが、やはりある程度のものをお求めにならないといい香りもしません。 お香には先述したように、「生きている人」への効果も絶大です。ご自分の気に入ったお線香を選び、仏さまもご自分も喜ばれるようにされてはいかがでしょう。 修行中などに、先輩僧が焼香の中に唐辛子などを入れて後輩をからかったりすることがあります。煙で喉が痛くなり、お経を唱えるどころではなくなります。お線香によっては、喉に引っかかる感じがするものもあります。 「仏壇にお線香は何本あげたらいいでしょう」と聞かれることが時々あります。何本でもかまいません。1本は弔事の時、仏法僧にあげるから3本がいいなどと理屈をつけたりする人もおられますが、根拠は??? 「抹香臭い」と言う文句はあまりいい意味には使われません。どことなく、カビくさいお香の匂いを連想します。 ご自分への「栄養」に、ちょっと張り込んで、お気に入りのお香を求めましょう。 |